振り込め詐欺に関するニュース記事のまとめ。

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2008年12月5日金曜日

「被害者の方に申し上げたいことがある」

 男は逮捕されてから、250日が過ぎようとしている。

 詐欺を繰り返す“日常”が一変したのは今年2月27日のこと。日課の朝のコーヒーを飲もうとしたとき、玄関のベルが鳴った。警視庁の捜査員だった。

 「逮捕状が出ています」

 共犯者の供述で、男の関与が浮かび上がったのだった。

 「『あいつ、最近いないな』と思ったら逮捕されていて、私の名前を話していたんだ。私は本名を使っていたから、簡単に分かってしまった」

 詐欺罪での起訴はほぼ終わり、公判が始まっている。

 「私が司法の場で裁きを受けるのは当然。私を失った妻や娘は社会的な制裁を受けた」

 それでも男は口を開いた。報道機関にきれいごとを言って裁判所の心証を良くしようとしているのか、改心の一環なのか、真意は分からないが、「被害を抑止することが願いで、究極の目標はすべての詐欺被害の撲滅」と強調する。

 「私は被害者の方に申し上げたいことがある」

 前置きし、語った。

 「だます側も幼稚な手口だが、だまされる側も大人の姿をした幼稚ないじめられっ子だ。普通の社会人ならとても引っかからないような言葉でだまされるわけだから、被害者にも責任はある。この現実から逃げていたら被害の撲滅などありえない。幼稚なトークにだまされてはいけない。自分のお金は自分で守らなくてはいけないと思う」

 だます側がいて初めてだまされる人が生まれる。数々の男の言葉は被害者にとって身勝手な言い分だが、拘置施設で「1番」と呼ばれる男は、それが被害者への「冒涜(ぼうとく)」だと認識している。

2008年12月4日木曜日

振り込め詐欺をバックアップする「道具屋」

 これら詐欺行為を支援するのが携帯電話や銀行口座といった犯行に必要なものを提供する「道具屋」だ。警察庁は全国の警察に道具屋の積極的な摘発を指示している。

 「道具屋とは警察が勝手に作った言葉。犯行グループの道具は細分化していて多岐にわたる」

 「携帯屋、口座屋、名簿屋、代行屋、印刷屋、まき屋、転送屋、私設私書箱などだ。こういった連中がグループに群がって犯行を支える。振り込めは大きな産業になっているといえる」

 融資保証金詐欺と架空請求詐欺の場合、ダイレクトメールや手紙を送るため、名簿屋から購入する「多重債務者名簿」が必要不可欠となる。

 「名簿屋は、ヤミ金上がりの若者が店から持ち出したデータを売るケースから本格的な業者までピンキリ。オレオレ詐欺や還付金詐欺の場合、高齢者のリストで十分足りるからさほど重要ではない。最近では名簿屋を使わず、通常の電話帳や電話番号が収録されたパソコンソフトを使って、片っ端から電話する犯人も多いと聞く」

 犯行グループが重宝するのが代行屋だ。

 「箱、いわゆる事務所を借りる際の名義貸しを行う業者だ。手数料は家賃の4カ月分が相場。月々の予算からも上前を取る。だから10件もこなせば相当なもうけになる」

2008年12月3日水曜日

源流はヤミ金

 「融資保証金詐欺だけでなく、あらゆる振り込め詐欺の手口に精通した」

 都内の拘置施設に勾留されている男(52)=詐欺罪で起訴=はこう豪語する。

 「振り込め詐欺が社会問題になったのは平成15~16年ごろからだと思うが、それ以前の社会問題にヤミ金があった」

 法定金利の上限を大幅に超える金利で貸し付ける無許可の金融業者「ヤミ金」の“残党”が始めたのが振り込め詐欺のルーツだという。

 「あるグループがヤミ金で使った多重債務者のリストを利用し、さらに金をだまし取ることを考え、始めた。これが融資保証金詐欺の発端だ」

 振り込め詐欺はヤミ金に続き、大きな社会問題となった。

 「振り込め詐欺をやっている連中も、元ヤミ金出身者が多い。そういった連中が地元のワル仲間を“業界”に誘ってグループを大きくしていった」

 金も高級ブランド品も簡単に手に入るから、なかなか足を洗えないという。

 「オレオレ詐欺や還付金詐欺の場合、1人が1日100~500人に電話するのが一般的だが、電話をかけるだけだから若者にもやりやすい。融資保証金詐欺はダイレクトメールを送って備える“待ち”の詐欺だが、郵送費など軍資金が必要になる。ある程度の組織をつくらないといけない」

 男は自分の共犯だった若者たちを見て、「悪意のなさ」に驚いたという。

 「最初は『だませるのか』と不安があっても、先輩の指導の下、いとも簡単にだませてしまう。自分のやっていることが悪いことという認識がなくなっている。『だまされる大人たちが悪い』と言わんばかりだよ」

2008年12月2日火曜日

300万円融資希望者から1600万円詐取「お笑いネタだ」

 「ダイレクトメールに応じてきた客に対し、『保証人がいない場合、当社が保証人を付けますので大丈夫』などとうそを言って、手数料名目で最初に10万~15万円を目安に請求する。『このお金はお客さまへのご融資の際に全額お返しします』とも付け加える」

 接見、手紙でのやりとりを重ねるにつれ、男は具体的な手口を明かしてきた。

 「融資希望額100万円で申し込んできた客が2日間で6~7回だまされ、手数料や保証料やらで1000万円以上を振り込まされることもある」。300万円の融資を希望しながら、1600万円を巻き上げられた被害者も知っているという。

 警察庁によると、今年の融資保証金詐欺の被害額は9月末時点で29億8374万円。前年同期比で約1億円増。振り込め詐欺の中でも被害者を徹底的に食い物にすることから、悪質といわれる。

 それでなくても多重債務者や零細企業経営者ら金に困っている人を標的にするため、大阪や新潟では被害者が自殺に追い込まれたケースもあった。

 「そんなに現金があるのになぜ300万円の融資を申し込んできたかはナゾだが、われわれの中ではお笑いネタになっていた」

 男は18年12月、芸能プロを設立する夢をかなえた。被害者を踏み台にした“汚れた夢”だった。

2008年12月1日月曜日

振り込め詐欺会社の運営費用は月600万円だった

 「やはりお金ということでしょうか」

 男が振り込め詐欺犯になった理由は金だった。

 男は昭和60年代のバブル期以降、不動産業を営んでいたが、会社をたたみ、平成18年に芸能事務所を立ち上げようとしていた。

 設立資金がほしかった時期に声をかけてきたのが「知り合いの男」だった。

 「共犯に関することは公判中なので詳しく述べることは差し控えたい」

 男はこの人物について多くを語らないが、地下社会に精通した者だったという。

 「私はそれまで逮捕歴もなければ、世間に後ろめたいことをしたこともなかった。話を持ちかけられたとき、冷静な判断ができなかったのだろう」

 「知り合いの男」の誘いは振り込め詐欺のリーダーになることだった。

 話に乗った。

 「すでに運営が始まっているグループを引き受けた。いわば“振り込め会社”を引き継いだようなもの。グループの運営費はダイレクトメール費などで月600万円かかった」

 男の役割は収益金管理。ダイレクトメールを発送する役、電話を受けるだまし役ら共犯者を“新規募集”する際には「手配師」と呼ばれる人物に依頼した。

 「手配師は警察が言う道具屋のひとつで、振り込め詐欺の“人材”を提供する業者。そうした業者の紹介は知り合いの男から受けた」

 男はその後、複数のグループを“買収”して傘下に収め、手広く振り込め詐欺を展開するようになった。

 「一般論で言うと、融資保証金詐欺の一つの“店舗”の純利益は月2000万~3000万円。私はそれほど稼いでなかったが、若者たちにはきちんと分配していた。いいリーダーだったと思うよ」

2008年11月30日日曜日

芸能事務所立ち上げたかった 資金づくりのため、誘われ、詐欺グループに 1

 10月上旬、産経新聞の警視庁担当記者宛てに1通の手紙が届いた。

 「振り込め詐欺の加害者として貴社に私を取材していただきたい」

 「振り込め詐欺をなくすために協力させていただきたい」

 都内の拘置施設に勾留中の男(52)からだった。

 留置番号「1番」と呼ばれている。

 振り込め詐欺の一種「融資保証金詐欺」の主犯格として詐欺罪で起訴された。

 産経新聞が9月28日から社会面で3回連載した『撲滅 振り込め詐欺』を読み、手紙を出したという。

 真意を聞くため、記者は拘置施設に行った。

 接見室でしばらく待つと、厚さ1センチほどの強化プラスチック板の向こうに、ほほ笑みをたたえた男が姿を見せた。短く刈られた白髪交じりの髪、地味なスエットの上下姿。

 「はじめまして」

 声には意外なほどに張りがあった。

 「私は今、反省し再社会化するために、無謀にも手紙を書きました」

 起訴状などによると、男は架空の金融業者を装い、多重債務者に融資申し込みを募るダイレクトメールを送付。昨年9月20日、岐阜市内の女性(30)に「保証金を支払えば融資が可能」などとうそを言い、現金8万円を振り込ませた。

 多重債務者から融資の保証金名目で金を巻き上げる典型的な融資保証金詐欺だ。同様の手口で計324万円をだまし取ったとして、今年3月から10月22日までに計7回、東京地裁に起訴されている。

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